被相続人が債務超過で亡くなったが自宅は残しておきたい

 

Q. 磯野波平は、自宅の土地と建物を所有していたが、資産よりも借金が多い、いわゆる債務超過の状態で亡くなった。相続人が自宅に住み続けるために自宅は残しておきたい。どのような方法があるか。

 

陥りがちな誤り

相続人全員が相続放棄をした上で、相続財産管理人選任の申立を行い、選任された相続財産管理人から相続人が買い取ればいいように思えます。

しかしこの方法にはリスクが伴います。

本当は・・

⭕自宅を確実に取得したいなら、相続人全員で限定承認をし、先買権を行使すべきである。

 

解説

債務超過であるため、まず思いつくのは、相続人全員が相続放棄の手続きを取ることです。

そうすると、相続人不存在となりますので、家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立て、遺産である自宅は、選任された相続財産管理人によって管理されることとなります。

相続財産管理人は、通常、自宅を売却して借金を返済しようとしますから、そこで相続人が任意に買取りを申し出ることは可能です。

しかし、相続人よりも高値で買い取りを申し出る第三者が出現してしまうと、取得できない可能性がありますので確実な方法とは言えません。

そこで取り得る手段としては、限定承認手続きとその中での先買権の行使になります。

限定承認というのは、相続人全員によって申立てを行い、プラスの遺産の範囲内でのみ借金などのマイナスの遺産を相続する、という手続きです。

このケースで言えば、プラスの遺産である自宅を競売にかけ、売却代金の限度で借金を返済し、残りの借金はチャラになる、ということになります。

この自宅の競売が行われる際に、民法932条に基づく先買権を行使することにより、限定承認をした相続人が優先的に自宅を買い取ることが可能となります

この先買権による買取りの金額は、家庭裁判所の選任した鑑定人の評価に基づくこととなります。